海洋環境保全と魚類防疫 090812


8月11日と12日は出張が入った。

今回は、「赤潮の発生メカニズムと被害防止対策」と「養殖魚・観賞魚の疾病と防疫対策」についての

研究成果確認と「魚類の免疫学的な指標に基づいた健康診断法」のための解剖実習を体験する。

今回の内容は趣味にも通じていて大変興味深いものである。

9:00からの仕事だが8:15に着いてしまった。


    
         ここで2日間を過ごす             「生物分類技能検定」、へーえ、なかなか面白い検定試験があるものだ  


さっそく建物の中へ入る。

30cmほどの「ブラックバス」と、7〜8cmの「クマノミ」が迎えてくれる。


    
     顔を近づけると寄ってくるブラックバス                     知らん顔をして泳ぐクマノミ


さっそく、この2日間お世話になる教室へ入る。

この教室で、今回の調査研究に取り組んでおられる教授・准教授が入れ替わり立ち替わり自分一人のために

講義・報告をしてくださる。

1日目と2日目の午前中はこの部屋で講義を受ける。

2日目の午後は魚類の防疫に関する実習なので、解剖実習室へ移動する。


                


※ 以後は講義のため写真撮影はできませんでした、悪しからず。

講義の内容

(1) 海洋環境保全について

赤潮とは? 赤潮とは、植物プランクトンが大増殖することによって海水の色が、赤褐色や茶褐色、緑色(緑色のものはアオコとも呼ばれています)に変わることをいいます。赤潮は古くから続く自然現象の一つとして知られていました。最近、赤潮が大きな社会問題として取り上げられるようになったのは、赤潮がより多くの漁業被害をともなうようになったからです。 赤潮は、陸に近く浅い海で、陸からの汚水が流れ込んでくるところに多く起こりやすく、例えば、瀬戸内海などの狭い海や、海水が汚染されているところです。
赤潮が発生する仕組み 赤潮が発生しやすいのは、植物の栄養となる窒素やリンが、大量に溶け込んでいる海水に多いようです。季節的には、春〜夏の時期に、海水中にいる植物プランクトンの数が増殖していきます。そして、海水の色が赤色に変わっていくことによって、プランクトンが大量に増殖し、「赤潮」が発生していくのです。赤潮が発生することにより、その海水に生息していた生物がいなくなるのは、その海水の中の酸素が減少するためによるものです。
赤潮が発生する原因 赤潮の原因としては窒素、りんの増加に伴う水域の富栄養化、 陸水や降雨による塩分低下等の物理的刺激などの説があります。 富栄養化とは、海の水に、栄養となる物質が多くなりすぎてしまうことです。その物質は、チッ素やリンなどで、これらは、家庭から出る生活排水や農地で使われる化学肥料などにふくまれているものです。 赤潮が発生すると、水中の酸素が少なくなったり、魚のえらにプランクトンがはりついたり、毒のあるプランクトンを魚が食べたりして、多くの魚が死んでしまうことがあり、漁業に大きな害をあたえます。
赤潮を予防するために まず第1に、海水域の富栄養化を防ぎましょう。水質汚染してしまうような、生活排水や工場排水を出さないようにしていくことがもっとも大切です。そして、現在は、いろいろ赤潮を予防するため、駆除するための研究がなされています。世界中でも赤潮の発生は、多いようです。実際に、これも地球温暖化の影響ではないか?ということなのです。海上の温度が上昇しているということは、やはり地球温暖化の影響を大きく受けているのではないでしょうか?

               
 シャトネラ・アンテカ(赤潮の原因)    シャトネラ・マリーナ(赤潮の原因)       ヘテロシグマ・アカシオ(赤潮の原因)

(2) 水族防疫について
   水道水に金魚をいきなり入れるとどうなるでしょうか。元気がなくなります。死んでしまうこともあります。
  清流に棲むアユやニジマスなどは生きられません。魚が弱ったり死んでしまうのは塩素の毒性のためです。
  プールの水も塩素で消毒されています。プールの水は水道水の10倍ほどの濃い塩素が入っています。
  そのため皮膚や眼に刺激を与えることになります。プールで魚と一緒に泳ぐことはできません。人では大丈
  夫でも、魚にとっては大きな問題となることがあります。

水産動物輸入について 海外から病気の持ち込みを防止するため、一定の水産動物を輸入するときには、水産資源保護法に基づき、事前に農林水産大臣の許可を得なければなりません。
養殖について 飼育しているコイ科魚類、サケ科魚類及びクルマエビ属のエビ類が特定の病気にかかったり、またはその疑いがある時には、持続的養殖生産確保法に基づき、都道府県知事への届出が義務づけられています。
コイヘルペスウイルス病 コイのみに発生するウイルスによる病気である。1998年にイスラエルで最初に発生し、ヨーロッパ、アメリカ、アジアに蔓延した。日本でも2003年に発生している。
ピシリケッチア症 海面養殖のサケ科の魚類に発生するリケッチアによる病気である。1989年にチリの海面養殖のギンザケで最初に発生した。北米やヨーロッパの一部で発生している。

(3) 免疫学的な指標に基づいた健康診断について
   魚類には獲得免疫が備わっているので、異物(抗原)が入ると特異的に応答し、記憶しておくことができます。
  二度目に同じ抗原が入ったときには一度目に比べてすばやく、より強い反応が起きて体内から異物を排除す
  ることができます。しかし、エビやカニや貝などの無脊椎動物には病原体を排除する機能はありますが、獲得
  免疫は備わっていません。現在魚類養殖で頻発している感染症をコントロールするために、食品衛生学的に
  も安全で、効果の高いワクチンを迅速に開発することが求められています。



この出張ではいくつか考えさせられることがあった。

魚類の輸入・輸出について現在、検疫が全く行われていないのだそうだ。

理由は、地球上の海はすべてつながっているから検疫をしても意味がないということらしい。

検疫が行われていないからいろんな疾病が地球上に蔓延しつつある。

いつ、魚類に限らず人間に広まることがあるかも知れない。

魚類の検疫の実行が急務である。



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