真言講    120225


我家の宗教は真言宗。 近所の釈迦院という寺院の檀家になる。 

このあたりでは、2ヶ月に一回会場を持ち回りで真言講という法要行事を行う。 今日は我家が会場になる。 

午後7時、近所の6軒から一人ずつお参り頂き真言講を行う。 みなさんに来ていただくとなると玄関の花もそれ用に。

雛祭りをイメージしたお雛さまバージョンのフラワーデザインでお迎えしよう。



                          



数日前から仏間のセッティングを行っている。 床の間の掛け軸を3本取り付ける。 

その中心になる弘法大師の掛け軸と右側のお経の掛け軸は、前回当番の家から回ってきたものだ。

仏間と仏壇の掃除をし、お供え物をそろえる。 お茶、お菓子を準備する。



                



雛祭りの時季なので雛人形も並べておこう。 しかし、雛段は省略しよう。 今日は、雛段を出して組み立てる余裕はない。

部屋のエアコン、スイッチオン。 さらにストーブを出してスイッチオン。 

さあ、これでお参り頂いた方々に温かいところでお経をあげて頂くことができる。



                    



「7時から」と近所の方々に案内している。 6時50分、お参りが始まる。

さっそく、歓談タイムが始まる。 今日お参り頂いた方は6人。 一人を除いてみなさんが女性だ。

おじいちゃんが一人、あとはみなさんおばあちゃんたちがお参りいただいている。 

失礼、まだ「おばあちゃん」と呼ばれたくない方もいらっしゃいます。

おばあちゃんたちが集まると一段と話が弾む。 みなさんが揃った7時10分頃からお経が始まる。

しばらく、お経タイムが続く。

真言宗のお経は「南無大師遍照金剛」(なむだいしへんじょうこんごう)。

平安時代より千二百年以上続く真言宗は、世界の平和、日本国の安泰、人々の不安を退け安心を得ることを願っているそうです。

理性と感性を大事にし、それを正しい行動にうつし実践することで、争いのない穏やかで幸せな世界を作ることが、

真言宗の大きな目的であり、その教えだそうです。

お経タイムが終わり、再びお茶と歓談タイムになる。



                    



歓談タイムでは、おじいちゃんの昔話が始まる。 

昭和20年の大洪水の話。 その時は、芦田川沿いの近所の堤防が決壊し、多くの人、家や田畑、家畜まで洪水に呑み込まれたと。

一夜明けると無残な光景があったそうだ。

中には行方不明になっていた人が後日、無事帰ってきた人もいたそうだ。 流木につかまって海まで流されていたとか。

現在では、芦田川の治水も良くなった。 ダムができ堤防が高くなり河川の治水対策は格段に良くなった。

堤防が決壊して被害が出ることはない。

次に、近所の方々の親戚関係やつながりについても数十年前にさかのぼって説明して頂くが、

あまりに古すぎて良く理解できないことも多い。 このようなことは、ぜひデータにして残しておきたいことだと思う。

当家でも知らないだろうと思われるような情報まで知っている。 さすがに年の功だ。

おばあちゃんたちは、昔話よりも現在の話が得意な様子だ。 実によく知っている。

まさに、地域の情報博士といったところか。 

さて、いつ頃からこのような真言講なる集まりが行われているのだろうか? 

今日、お参り頂いている方々が若かりし頃には、もうあったそうだ。 たしかにそうだろう。

「もっともっと昔、江戸時代の初め頃、檀家制度ができ始めた頃、寺が戸籍を扱っていた頃から、

寺ごとに真言講などのような小さなサークルを作り仏教以外の宗教が入り込めないようにしていたのではないだろうか」

と勝手に想像してしまう。



ところで、我が町内の「真言講」が衰退の一途を辿っている。 多くの町内でも、各お寺の「○○講」なるものがなくなっている。

忙しい現代社会では、時間がない、余裕がない、準備が大変だ、等々いろんな理由がある。

しかし、この「○○講」などの行事はいい面もある。 隣近所のコミュニケーションをとることができる。 繋がりが保てる。 等々・・・。

自分も、これについてはどっちがいいとか言えないが・・・、いや、自分は、続ける方に傾いているのかなとも思う。

今日は、お参り頂いた皆さん、ありがとうございました。





                                    



このページを作成してから、1年9ヶ月の月日が経過しました。 現在、2013年9月20日(金)です。 

本日、近所のみなさん7軒で続けてきた真言講が終了しました。 

檀家寺とほぼ同じ歴史を持ち、おそらく数百年の歴史がある真言講だったと思います。

2年あまり前から真言講を続けることには賛否両論がありましたが、ついに結論が出ました。

現在の社会状況の中では、中止せざるを得ない状況です。 数百年の歴史に終止符が打たれました。

大変、寂しい思いですが仕方ありません。 代々苦労しながら続けてこられたご先祖の皆様、申し訳ありません。 

これから、また新しい歴史の始まりです。




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